感染症科見習いの勉強記録

日々の学びを淡々とつづります。

Bacterial translocation

しばしばイレウスなどで話題になるbacterial translocationですが,その都度調べるはめになっているのでメモします。

まず青木マニュアル。索引から調べてもbacterial translocationの項目はありません。腹部感染症の章にも記載はありません。

一方UpToDateですが,こちらも"bacterial translocation"で検索してもページは見当たりません。ただ,イレウスのページには記載がありました。

抗菌薬の役割 - 合併症のない腸閉塞のほとんどの患者には、予防的抗菌薬の投与を行わないことを推奨する。bacterial translocationを懸念して広域抗菌薬の投与が行われているが、それを支持または否定するデータは十分ではない。

しかし、腸管の障害(すなわち、虚血、壊死、または穿孔)が疑われる患者には抗菌薬の投与が必要であり、また、予想される術創の分類に応じて、手術で切開を行う患者には標準的な周術期の予防的抗菌薬を投与すべきである。

抗菌薬治療は、非癒着性腸閉塞の炎症性または感染性の原因(例えば、感染性小腸疾患または大腸憩室炎)を治療するためにも必要である。このような患者では、根本的な原因を追求することが、腸閉塞を解消する鍵となる。

https://www.uptodate.com/contents/management-of-small-bowel-obstruction-in-adults#H3646142496

結局,bacterial translocationに決まった治療方針はないということでよさそうです。菌血症があれば,腸管感染症の評価をして,介入すべき点がなければ,菌血症の治療をとなりそうです。

 

追記:

下記文献によれば,グラム陰性桿菌のみの情報にはなりますが,菌種によっては腸管からの菌血症も十分ありえるかもしれません。

https://journals.asm.org/doi/10.1128/CMR.00234-20

Site of Originで腸管が示唆される菌:クレブシエラ,大腸菌,シトロバクター,エンテロバクター