感染症科見習いの勉強記録

日々の学びを淡々とつづります。

AmpCとESBL

どちらもグラム陰性桿菌(腸内細菌科細菌)で問題になるが,まず,両者の違いについて

<AmpC>染色体上のβラクタマーゼの遺伝子。Enterobacter spp,Serratia spp,Citrobacter.freundii,Morganella.morganiiなどが有する。AmpCの抑制遺伝子の変異と抗菌薬(主に第三世代セフェム)による選択圧により,AmpC高産生株が問題となる。耐性をとられる抗菌薬は,アンピシリン,ピペラシリン,第三世代までのセフェム(セフメタゾール含む)。通常,検出検査は行われない。

<ESBL>基質特異性拡張型βラクタマーゼ。Krebsiella.pneumoniaeのみならず,E.coli,Krebsiella spp,Proteus.mirabilisで増加している。プラスミド上のESBL遺伝子が拡散したとされる。耐性をとられる抗菌薬は,アンピシリン,ピペラシリン,第四世代までのセフェム(セフメタゾール含まない),アズトレオナム。βラクタマーゼ阻害薬であるクラブラン酸で阻害できることから確認試験に用いられる。他の腸内細菌科細菌がESBLを有することもあるが,それらはAmpCも有することがあるため,検査で判定するのは難しい。

ESBLに対しては,同じくβラクタマーゼ阻害薬であるタゾバクタムを配合するTAZ/PIPCが有効ではないかと期待されていたが,MERINO trialで,メロペネム群と比較して死亡率が高かったことから積極的には使いづらい状況となっていた。

先日,今度はAmpCに対するTAZ/PIPCの有用性を評価したMERINO-2 trialの結果が報告された。

AmpC産生菌の成人菌血症患者にTAZ/PIPC 4.5g q6hとMEPM 1g q8hで無作為化比較。30日死亡+臨床的失敗+微生物学的失敗+微生物学的再発の複合アウトカム達成率はTAZ/PIPCとMEPMで有意差がなかった(p=0.41)。Per-protocol解析でも同様の結果だったが,サンプル数が小さい(TAZ/PIPC 38名 vs MEPM 32名),経験的治療の内訳やソースコントロールなどが不明といった制限あり。

また,同じタイミングの日本の報告で,レトロスペクティブではあるものの,ESBL産生大腸菌による腎盂腎炎,前立腺炎など侵襲性尿路感染症に対するCMZの有効性が報告されていた。投与量はCMZ 1g/1h q8hと明記されている点が新規性のよう。

TAZ/PIPCは盲目的に使わなければ(特に長期投与やVCMとの併用),AmpCにせよESBLにせよ,MEPMを保存するために初手として使える(使わざるを得ない)印象。菌が判明して,AmpC系であればセフェピムに,ESBL系であればセフメタゾールに変更すれば,多少はマシか。